コルデーはその場で、ただちに逮捕され、四日後の七月十七日に、ギロチンにかけられて処刑された。まだ二十五歳の若さであった。

 処刑される前に、革命裁判所で訊問されたが、その時の彼女の沈着さ、冷静さは、当時のひとびとの心を大きく揺り動かしたと言われる。裁判官たちに向って、コルデーはこう言ったのだった。「あたしは十万人のひとびとを救うために、ひとりの人間を殺したのです……」と。自分の行為は正しいと確信していたから、彼女は少しも動揺の色を見せたりしなかった。

 裁判のあいだ、シャルロット・コルデーは、画家を呼んで自分の肖像画を描かせてほしいと要求した。そして裁判官の訊問を受けながら、画家のモデルになったのである。その肖像画は、今でもヴェルサイユ美術館に残っている。彼女はボンネットをかぶって、長い髪の毛を肩の上に垂らしている。なかなかの美人である。

美しく、若く、輝かしい貴女の姿は、死刑執行人の目にあたかも結婚式の車に乗ってきた女人のように見えた。

と詩人のアンドレ・シェニエが歌っている。

 いったい、なぜ彼女は自分の肖像画などを描かせようという気になったのだろうか。自分が歴史に残るということを、意識していたのだろうか。


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Last-modified: 2009-03-25 (水) 23:03:40