ニイチェやブルクハルトをして賛嘆せしめた、ルネサンス期の最も典型的な権謀術数型の君主というべき怪物チェザーレ・ボルジア(一四七五〜一五〇七)は、歴史と文化の頽廃期にしばしばあらわれる狂気の皇帝、芸術愛好の専制君主、耽美的な独裁者の群のなかでも、とりわけて、私の共感を惹く人物のひとりである。何ならわが理想の人物と言ってもよい。

権力欲、裏切り、暗殺にみちた輝やかしい大胆不敵な生涯は、マキアヴェルリをして、あの有名な『君主論』を書かしめるに至り、「マキアヴェルリズム」という言葉とともに後世に永く生き残ることになった。

#ls2(毒薬の手帖/ボルジア家の天才)

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