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 最後の七年間、女の色香が衰えたことを知ると、[[ポンパドゥール夫人>ポンパドール夫人]]は、ヴェルサイユ宮殿のなかに、有名な「鹿の園」をつくらせて、そこに美女をあつめ、王のために若い愛人を次々に取り持つ役目に、みずから甘んじたと言われている。「七年は女衒」というのは、そういう意味であろう。「鹿の園」という名前は、それ以後、快楽の園を意味する代名詞になった。

 しかし、十八世紀第一の画家ラ・トゥールの描いた、ポンパドゥール夫人の肖像画を見ると、彼女の逆の面、つまり、当時の進歩的な文学者や思想家のパトロンであった、すぐれた女性としての一面が窺えるのである。

 彼女の肖像のそばには、机の上に百科全書が置いてあるが、ポンパドゥール夫人は、当時の保守的な政治家や神学者の意見に反対して、この百科全書の出版を援助したのであった。彼女が百科全書家たちのファンだったということについては、おもしろいエピソードがある。

 あるとき、ルイ十五世がヴェルサイユ宮殿のトリアノンで食事をしていると、たまたま火薬の製法が話題になった。「製法なんか知らなくたって、私たちは毎日狩りをしているではありませんか」と一人の王子が言った。するとポンパドゥール夫人が、「絹の靴下はどんな風にして作るのでしょうか」と言った。ある公爵が、「そんなことは、みんな全書に書いてあります」と言ったので、王は本を持ってこさせたという。

 こうして、彼女は王に百科全書の価値を認めさせ、発禁処分を取り消させたという。頭の良いやり方で、からめ手から攻めたわけである。こんなところにも、彼女の頭の良さがよく現われているような気がする。

#ls2(女のエピソード/ポンパドゥール夫人)

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