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*現代ならばさしずめデヴィ夫人(?)

 男から男へと渡り歩き、派手な話題をふりまいて、次から次と恋の冒険(アヴァンチュール)を重ねながら、波瀾万丈の生涯を送る女性を、フランス語で「アヴァンチュリエール」という。

現代ならば、さしずめジャクリーヌ夫人、キーラー嬢、デヴィ夫人といったところであろうが、これからご紹介する妖姫ローラ・モンテスは、その生涯の浮き沈みのはげしさという点で、おそらく、後女たちよりももっと「アヴァンチュリエール」の名にふさわしい女性であった。

一八一八年、アイルランドの片田舎に生まれた[[ローラ>ローラ・モンテス]]は、二十二歳のとき、パリのモンマルールの劇場「フォリ・ベルジエール」に現われ、その美貌と踊りで、センセーションをまき起こし、たちまちヨーロッパ中の人気者となる。

 そしてフランス指折りの大富豪、彼女と親子ほども齢の違う老貴族と結婚するが、男出入りがはげしくて、彼女のために決闘する者数知れず、といった有様。

 やがて[[ローラ>ローラ・モンテス]]はミュンヘンに現われる。当時、ミュンヘンには芸術愛好家として名高い王、ルドヴィヒ一世が君臨していた。[[ローラ>ローラ・モンテス]]は王様に謁見を申しこんだ。そのとき、彼女が名のった名前は、マリア・ドローレス・ポリス・イ・モンテスという長ったらしい名前で、スペインのアンダルシア生まれという触れこみである。

女に甘い王様は、[[ローラ>ローラ・モンテス]]を一目見ると、その美貌と均整のとれた姿態に、たちまち目尻を下げてしまった。
>「ふうん、これは美しい身体じゃのう。まるでミロのヴィーナスそのままじゃ。しかし、その形のいいオッパイは、まさかパッドでふくらませているんじゃあるまいね?」

 そう言われると、[[ローラ>ローラ・モンテス]]は美しい顔をきっと引きしめて、どこに隠していたのか、右手にナイフを取り出し、形よくふくらんだ着物の胸のあたりを思い切って引き裂いたのである。
>「王様、ごらん下さいませ…」

 白日のもとに露わになった、みごとな乳房のふくらみを見て、ルドヴィヒ一世は息をのんだ。これで完全に、彼女の魅力のとりこになってしまったのである。[[ローラ>ローラ・モンテス]]の打った思い切った芝居は、大成功をおさめた。

 国王から立派な別荘をあたえられ、さらにランズフェルト伯爵夫人の称号をあたえられた[[ローラ>ローラ・モンテス]]は、今や、貴族として自由に王宮に出入りする身分となった。むろん、王様の情婦として、政治にも口出しすることができるような、絶大な権力を手に入れた。

#ls2(女のエピソード/ローラ・モンテス)

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