カリオストロのふしぎな予言のなかでも、いちはん世に知られているのは、彼がストラスブールにいた当時、遠く離れた場所における皇太子の誕生をずはりと言い当てた予言であろう。妊娠中の王妃マリー・アントワネットヴェルサイユ宮殿にいたわけだから、彼は王妃に会ってさえいないのである。
 事の次第をややくわしく述べれば、−妊娠中の王妃がおそろしい夢をしきりに見るので、心配になって、親友のド・ラ・モット伯爵夫人を使者に立て、無事に安産できるかどうか、名高いカリオストロに未来を占ってもらおうとした。カリオストロは快く承知した。まず若い無垢な処女を催眠状態におちいらせて、テープルのそばへ連れてゆく。テープルの上には、透明な水のはいったクリスタル・ガラスの瓶が置いてあり、その両側には赤々と燃える松明《たいまつ》が立てられている。処女は瓶をじっと見つめる。「何が見えたか、言ってごらん」とカリオストロが命じる。娘は、王妃が男の子を生んでいる光景をはっきり見たのであった。この予言はぴたりと適中して、王妃マリー・アントワネットは、数週間後に、ヴェルサイユ宮殿で、無事に男の子を生み落したのである。


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Last-modified: 2008-03-21 (金) 00:06:50