ところで、あれほどひとびとにおそれられたボルジア家の毒薬とは、どんな種類のものだったのだろうか。しかしこれについては、ほとんど確実なことが何も解っていないのである。世間のいい伝えるところによれば、その毒薬は「カンタレラ」と称し、雪のように白い、味のよい粉薬であって、多くの場合、きわめて徐々に長期間に効力を発揮する。

毒殺者は指環の石のなかに粉末をかくし、油断を見すまして、相手の飲物のなかに、ばらばらと粉末をこぼず。チェザーレにしてもルクレチアにしても、こういう技術にかけては、熟練をきわめていたいらしい。


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Last-modified: 2008-03-17 (月) 00:03:49