ノストラダムスの「予言集」は『百詩篇《サンチユリー》』と呼ばれ、四行詩が百篇集まっている。異本はいろいろあるけれども、この 『百詩篇』が一つの予言集に七巻な
いし十巻も含まれているので、四行詩の数は全体で千篇近くにも達するわけだ。いま、そのなかの幾つかを翻訳してお目にかけよう。

   イタリアの近くに一人の皇帝生まれん
   イタリアは帝国に高く売られん
   何たる連中と皇帝は徒党を組むことか
   王と言わんよりは屠殺夫のごとし

 これは第一巻第六十番の四行詩で、学者の解釈によると、皇帝とは明らかにナポレオンをさしている。コルシカ島イタリアの近くだからである。「高く売られん」というのは、一七六七年、ジェノヴァ共和国コルシカ島の権益をフランスに譲渡した事実をさしている。ナポレオンが数々の大戦争で民衆の血をおびただしく流さしめたことは、誰でも知っていよう。「屠殺夫」とは、その意味である。

 ナポレオンが帝位についたのは、この「予言集」(一五五五年刊)が出てから約二百五十年後のことであるから、ノストラダムスの歴史を見通す能力たるや、まことに驚嘆すべきものがあろう。しかし、こんなことで驚いているようでは、とてもこの予言の大先生と付き合ってはいられまい。次に紹介する詩では、わたしたちの記憶に今なお新らしい、約三百五十年ないし四百年後の、二十世紀の諸事件をもぴたりと言い当てているのである。引用をつづけよう。


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Last-modified: Fri, 21 Mar 2008 00:02:32 JST (3773d)