神秘につつまれたマンドラゴラは、古代人の催眠飲料、または吐剤として、一番古くから重要な役割を演じている。おそらく、ペルシアからギリシアへ、ギリシアから地中海諸国へと伝わったナス科の植物で、不気味な細長い根をもち、何となく人間の形を思わせるものがあって、殊に、黄色味がかって、赤い、よい匂いのする果実と結びつき、よけい神秘的人気を博したものらしい。現在はこの植物から、ヒヨスチンおよびスコポラミンという二つの猛毒性アルカロイドが発見されたが、化学者がこれを発見する数千年前から、人類はその液汁を催眠飲料に供していたわけである。

その毒性を転用して、外科手術にクロロホルムなどと同じように使われてもいた。有名な『君主論』の著者マキアヴェルリが晩年に『マンドラゴラ』なる戯曲を書いているが、これは、その毒薬を種にして、ありとあらゆる悪玉が手練手管の限りをつくすという芝居である。

#ls2(毒薬の手帖/マンドラゴラの幻想)

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