#freeze
ジョルジュ・サンドが、もっぱら自分より若い男を好んで愛したということも、彼女の男勝りの性格から言って、当然のことだったかもしれない。詩人のミュッセと公然たる仲になったとき、彼女は二十九歳、ミュッセは二十三歳だった。二人はイタリアのヴェニスに駈け落ちしたが、ミュッセはそこで大病になり、[[サンド>ジョルジュ・サンド]]は熱に苦しむ詩人をほっぽり出して、別の男と一緒に逃げてしまった。その男というのが、ミュッセのかかっていた土地の医者だったというから、これはどう考えても彼女の方が悪い。

音楽家ショパンとのロマンスが始まったとき、[[サンド>ジョルジュ・サンド]]はすでに三十代の半ばで、ショパンは二十七歳。二人のあいだには十歳の開きがあり、[[サンド>ジョルジュ・サンド]]は今までの専制君主的な恋愛とは打って変って、母親のように若い男の面倒をみた。しかし、これがショパンには拷問のような苦しさで、ようやく女と別れたとき、彼は廃人同様になっていた。

[[サンド>ジョルジュ・サンド]]が惚れ抜いていたのに、ついに手に入れることができなかった男もいた。すばらしいダンディーのピアニスト、フランツ・リストがそれである。[[リスト>フランツ・リスト]]にはダグー伯爵夫人という愛人がいて、彼女に義理を立てていたのである。このダグー夫人に対しても、[[サンド>ジョルジュ・サンド]]は同性愛めいた友情を寄せていたというから、話はまことに複雑である。[[ダグー夫人>ダグー伯爵夫人]]に宛てて、[[サンド>ジョルジュ・サンド]]はつぎのように胸の思いをぶちまけている。「あたしの痛切な願いは、あの[[リスト>フランツ・リスト]]が力いっぱいたたくピアノの下に身を横たえることです」と。

こうしてみると、案外、[[サンド>ジョルジュ・サンド]]も平凡な女の幸福を夢みていたのではなかったろうか、と思われてくる。

#ls2(女のエピソード/ジョルジュ・サンド)

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