伝説に残っている最古の毒殺事件といえば、ニネヴェの都を築いたアッシリアニヌスが、その妻である女王セミラミスに殺された事件であろう(紀元前二世紀)。セミラミスバビロンの「架空庭園」を造営した贅沢好きな、男勝りの女王である。
 聖書の中には、毒についての記述はきわめて少ない。遊牧のユダヤ民族は毒にあまり興味がなかったのかもしれない。旧約の申命記に、「汝らのうちにニガゼリまたはニガヨモギを生ずる根あるべからず」とある。黙示録第八章にも、「燈火のごとく燃ゆる大なる星、天より落ちきたり、川の三分の一と水の源泉との上におちたり、この星の名は、ニガヨモギという。水の三分の一はニガヨモギとなり、水の苦くなりしによりて多くの人、死にたり」とあるのを見れば、この苦味のある植物が、彼らのあいだで毒と考えられていたことは明らかである。
 バビロニアの王ネブカドネザルが乱心して野原へ出、ニガヨモギの根に中毒した結果ではあるまいか。


トップ   差分 バックアップ リロード   一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: Sun, 19 Sep 2010 13:54:48 JST (3005d)