おもしろいのは、マゾッホと別れたあとで、ワンダが『告白録』を発表していることであろう。『毛皮を着たヴィーナス』という小説によって、あまりにも有名になってしまった自分のために、彼女は苦しい自己弁護をしているのだ。

 その『告白録』によると、彼女はもともと、ごくふつうの女だったのに、夫に強要されて、あのような異常な生活を送らなければならなくなったのだ、という。夫は自分に姦通を強制し、その現場を、かくれて見ているのが趣味だったともいう。

 しかし、このワンダの『告白録』は、いかにも虚栄心の強い女の筆で書かれたような文章で、一般の評判はあまり良くなかったようである。それでも、異常な夫婦生活を知りたいという、好奇心の強い読者はいつでもいるもので、この『告白録』は、いまだに世界中で売られているらしい。

 ワンダは生まれつきのサディストであったのか、それとも夫に強制されて、やむを得ず、サディストの役目を演じていたのか、あるいは演じているうちに、だんだん本物のサディストになってしまったのか−さあ、これは永遠の謎と言う以外に、何とも言いようがあるまい。


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Last-modified: Wed, 25 Mar 2009 23:05:28 JST (3548d)