一七八九年、フランス革命が起って、ルイ王朝がつぶれると、サドはようやく自由の身となって、バスティーユ牢獄を出ることを許される。ところが、このとき、じつに不思議なことが起ったのだ。

 あれほど長い年月にわたって、忠実に夫に仕え、夫の出獄の日を何よりも待ちわびていたはずの夫人が、どうしたことか、修道院に閉じこもってしまって、訪ねてきた夫にも、会いたくないと伝え、離別の意思を明らかにしたのである。

 夫人の心は、謎としか言いようがない。三島さんの戯曲『サド侯爵夫人』も、この謎を解こうとして書かれたものだった。


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Last-modified: Wed, 25 Mar 2009 23:04:40 JST (3317d)