(7)ヴァン・デン・リンデン事件
一八八七年にオランダのヘーグで裁判を受けたヴァン・デン・リンデンという女の犯罪も、前者と同じく、きわめて動機の曖昧なものである。
容貌の醜い彼女は、臨時の看護婦として勤勉にはたらいていたが、その母親、父親、三人の子供をそれぞれ毒殺し、さらに百人以上の人間に砒素を盛ろうと試みた。それというのも、ある相互扶助会が出していた些少の保険金を手に入れるためであったというから、まことに驚き入った話である。真実の動機は、むろん精神生理の深層部にうごめく暗い衝動であったろう。
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