生涯にわたって、勉大な量の書物を書き残したパラケルススの学問や思想の体系を、言のもとに要約するわけにはいかないが、まあ、一種の神秘的な自然哲学だと思ってもよいだろう。占星術と錬金術をごっちゃにしたような、大宇宙や小宇宙の理論も見られる。さらに、当時までは主として薬草に頼っていた医学に、化学療法を導入したという意味から、彼は医学上の先駆者の地位に立っている。『子宮論』などという著作もあり、男の精液を蒸溜器のなかに密封して、ホムンクルス(一種の小人《こぴと》)を製造する方法がくわしく述べられている。この小人の製造法は、のちにゲーテが『ファウスト』を書く時に利用したものと思われる。

#ls2(妖人奇人館/放浪の医者パラケルスス)

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